夜露の気配を漂わせ秋風が流れるようになると、私の足はいつも以上に夜の街へと向かうようになります。 先日も旅先でついつい灯りに誘われてある店に入りました。 一見の客と見てとるやすぐに常連らしき客が「どこから来たの?」と訊いてきます。 「金沢・・」と答えると「北陸だったらいける口なんでしょうねぇ」という声が間髪入れず返ってきました。 銘醸地の印象が強いせいか、北陸出身者は「酒豪」に見られてしまうことが多いようです。 けれども北陸に限らず、東北、九州・・・ 全国どこに行っても蔵元はあるもの・・ けっきょくどこの生まれであろうと「いける口」になるのかもしれません。 酒飲みというのは、そうやって何事も都合よく短絡的に捉えてしまうものなのでしょう。 そういえば季節にしたところで、春夏秋冬いずれも酒にはつきづきしく感じられるものです。 「人恋しい秋に酌み交わす一杯こそ至福の味わい・・」 そんな上戸のセリフを下戸は毎度毎度呆れて聞いているのかもしれません。