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表紙とコラム Vol.160
黒部峡谷鉄道(富山県黒部市)

秋の虫たちの声を日本人は左脳で聞き、欧米人は右脳で聞くそうです。左脳は言語など論理的な分野を受け持つ脳で、右脳は音を処理する脳だとのこと・・・この説でいくと日本人は虫の声に何らかの意味を求め、欧米人は大雑把な音として捉えるだけということになります。
なるほど、生き物の声に言葉をあてはめる「聞きなし」が古来、日本で行われてきたことに合点がいく話です。

とはいえ異国の人たちが虫の声をノイズ程度にしか感じていないと断じるのは、いささか乱暴なことのようにも感じます。 そもそも日本人だって今やコオロギ、キリギリス、スズムシなどの声を正確に聞き分けられる人はそう多くはないでしょう。

先日、戸棚の奥に秋の虫が入り込み羽根を擦り合わせていたのですが、私はそれがカネタタキだと見当をつけました。
カネタタキは夏が終わりかけるころから人目につかない場所でチッチチッチと鋭い音をたてる虫なのですが、周囲にいた人間は「何か変な音がする」と言い合うだけでした。
もはや日本人といえども、虫の声に耳を傾け「もののあわれ」を感じるような人間は少数派なのです。

住まいが高気密になり自然界の音と接触する機会が減ったことで秋の虫もゴキブリも十把ひとからげのようになってしまいました。情緒豊かな日本人の耳が失われてしまったことが残念でなりません。

黒部峡谷鉄道(富山県黒部市)
日本一深いV字峡谷を走るトロッコ電車は、宇奈月温泉から立山の欅平までの約20kmを1時間20分ほどで結ぶ鉄道です。沿線には手付かずの自然が溢れ、駅ごとに見どころがあります。窓がなく開放感のある普通客車と、肌寒い日でも安心の窓付きの客車があります。

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