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表紙とコラム Vol.143
越前竹人形の里(福井県坂井市)

「満開の桜を見られるだろうか」
大病を患い余命いくばくもない人がそうつぶやいたという話を耳にしたことがあります。はたしてその人の願いが叶ったのかどうかはあえて訊かなかったのですが、日本人が未来に思いをはせるとき、桜の開花を基準に考えることが多いような気がします。むろん新年度の始まりと重なるからという理由はあるでしょうが、もっとも大きいのはその生態ではないかと思うのです。

よく散り際のはかなさが話題にされますが、その一方で桜はつぼみが少しほころんだかと思ったら、たちどころに開花し満開を迎えます。そんな季節をいっぺんに変えてしまう桜のエネルギーに人々は心のよりどころを見出そうとしているのかもしれません。桜は生命力の象徴なのです。

かつて阪神大震災が起きた年、春の選抜高校野球は予定通り甲子園球場で開かれました。大勢の犠牲者が出た中で開催できるかどうかは微妙でしたが、GOサインの決め手になったのは兵庫県知事の「被災した人も桜の咲く頃には明るいニュースを待っていると思います」という言葉だったといいます。
今は落ち込みふさいでいたとしても、桜が咲けば意識が少しでも上向きになるはず。
この春も柔らかな日差しの下で揺れる淡紅色のグラデーションが生き抜こうとする人たちに大いなる希望の光を届けることでしょう。

能登鹿島駅(石川県穴水町)
のと鉄道の能登鹿島駅は、「能登さくら駅」とも呼ばれ、構内の桜がホームを包み込むように咲き、桜の名所となっています。アニメ「花咲くいろは」や「マジンガーZ」「キューティハニー」などのラッピング列車も運行しており、お花見をさらに盛り上げています。

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