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表紙とコラム Vol.130
旧森田銀行本店(福井県坂井市)

毎年のことですが、繁華街の街路樹のイルミネーションは気が付くと取り外されています。 私はこれが残念でなりません。せめて「今夜でライトアップは終わりですよ」と知らせてくれれば最後の輝きを目に焼き付けることができるのですが・・・
そもそも点灯式まで開いて盛大に祝うスタートに比べ、終わりはあまりにもひっそりしすぎです。物事の起点と終点はともにはっきりさせるべきだと私は思います。

話はかわりますが、3月5日は二十四節気の啓蟄(けいちつ)です。冬籠りしていた虫たちが目覚めて地中から這い出てくる日とされていますが、おそらく昔の人は厳しい季節を葉陰や石の下で乗り越えてきた健気な命の躍動に心弾ませたのでしょう。啓蟄にはそんな小さな生命力への賞賛があるような気がします。

ただ、私は二十四節気の中に啓蟄と対になる言葉がないのが残念でなりません。自然界にこれだけ細やかな眼差しを向けていながら冬籠りを開始する日がないのはどういうわけなのでしょう。街中のイルミネーションとは逆にこちらは始まりが等閑(なおざり)にされているのです。

そういえば日本気象協会が中心になって進めていた二十四節気を見直そうという取り組みがこのほど見送りになったと聞きました。「歴史的な意味を無視している」という反対意見が多かったからだそうですが、それでも啓蟄の対義語だけは考えてみてもよかったのではないでしょうか。

旧森田銀行本店(福井県坂井市)
三国港の豪商森田家が創業した森田銀行の新本店として大正時代に建てられた、福井県内に現存する最古の鉄筋コンクリート造のたてものです。 外観は西欧の古典主義的なデザイン、内部は豪華な漆喰模様があります。 平成6年に坂井市(旧三国町)の財産となり、一般公開されています。

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