少し前の話になりますが、某ミュージシャンがステージで暴言を吐いた上に公演を切り上げてしまったという話題がありました。さっそく芸能レポーターが駆けつけてファンに直撃していましたが、全体的に乱れたミュージシャンを非難する回答だったのを少し残念に感じました。

海外のステージに目を移せば、暴言どころか殴り合いの喧嘩まで起きることがありますが、ファンはけっこう面白がって見ているといいます。ちなみに日本でも昭和の頃、有名なフォークシンガーがファンから「帰れ！」と言われ、本当に帰ってしまったことがありました。そんな天衣無縫がまかり通る時代だったのでしょう。

そういえば落語の世界には、酔っ払って高座に上がり居眠りを始めたある名人の姿を客が芸だと勘違いし、固唾を呑んで見守っていたというエピソードが残っています。さすが名人ですが、仮に酩酊しているのがばれたとしても客は拍手喝采だったにちがいありません。おそらく客が触れたかったのは名人の人柄や生き方だったのです。私はこれぞまさにライブの本質ではないかと思います。

いつのまにか演じる側も観る側も品行方正になってしまいました。
一流のプロ イコール完璧だという考え方は誤りではないかもしれませんが、中にはそれがあてはまらない世界もあるはずです。ミュージシャンのライブくらいは少々破天荒でもかまわないのではないでしょうか。