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表紙とコラム Vol.96
桜と石川門(金沢市)

年度の変わり目は思いがけない来客があるもので、先日も15年ぶりくらいの懐かしい再会がありました。相手は私がかつて入り浸っていた飲み屋でアルバイトをしていたO君です。
当時は学生だった彼ももうすぐ不惑。すっかり風貌がオジサンでしたが、博覧強記なのは相変わらずで楽しい時間を過ごすことができました。

聞けば彼の20代は失敗の連続だったそうです。志望していた大学院に不合格となり、故郷に戻って勤めた広告代理店ではクライアントの大手企業から鼻の先であしらわれ、屈辱的な体験もしたようです。しかしそんなO君に転機が訪れたのが10年ほど前、乞われて中学校の講師となり、その後、正式に教員として採用され現在に至っているとのことでした。

O君は自分が受け持っているクラスがいじめや学級崩壊とまったく無縁だということを自慢します。 彼によると教室というのは何でもいいから熱中できるものがあればけっして空中分解することはないのだそうです。 そしてO君のクラスの話題の核はなんと彼自身なのだとか・・・もしそうだとすれば、でこぼこだらけだった彼のこれまでは無駄ではなかったのかもしれません。
「人生、壁にぶつかることの方が多いけれど、すべてに意味があったのだとやっと思えるようになりました」
O君は笑顔でそう言います。新学期を迎え、彼はさっそく上手くいかなかった自分の過去を教壇で活き活きと話していることでしょう。

桜と石川門(金沢市)
金沢市の「兼六園」の向いにある「石川門」は、お花見の名所にもなっており、たくさんの人々が集います。 ライトアップされた桜と石川門は、1年のうち、ほんの数日間しか見ることができません。 金沢城・兼六園の次のライトアップは6月上旬です。

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