表紙とコラム Vol.93 | |
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大雪が降った日、年配の方が懸命に除雪をしている光景をあちらこちらで見かけました。 私などは「寒気が抜ければ雪は自然にとける」と考え必要最小限の雪かきしかしないのですが、年配の方は時間をかけて隅々まで丁寧に雪を取り除こうとします。 おそらく隣近所の玄関先がきれいに除雪されているのに、自分の家の前だけ雪深いのでは他人に迷惑がかかると考えているのでしょう。 それは年配の方ならではの罪悪感なのかもしれませんが、そのような心理が彼らを雪かきに駆り立てる要因の一つになっているのは間違いありません。 でも、それだけでしょうか。 私の知人の父上は体調不良で入院しながらも町内の除雪デーに参加できないことを悔やんでいたそうです。 知人は呆れていましたが、私には何だかわかるような気がしました。 たぶん年配の方々には豪雪に往生した30年も40年も前のことが意識のどこかに刻まれているのです。 その昔、北陸の冬は地域で力を合わせなければ乗り越えることはできなかったといいます。 そうした白魔に立ち向かう精神は一昔前までは代々受け継がれていたはずで、それが私にはとても尊いものに思えます。 暖冬の現代、たしかに「雪は自然にとける」のかもしれませんが、私たちは大切な遺伝子をひとつ失ってしまったのかもしれません。 |
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石川県銭屋五兵衛記念館(金沢市) 「海の豪商」「海の百万石」と称せられ、江戸末期に活躍した銭屋五兵衛の人物像、偉業の資料を集めた記念館です。 両替商の家に生まれ、17歳で家督を継ぎ、呉服や材木商など事業を拡大し、その後大海運業者となった五兵衛の全てがわかります。 |
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