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表紙とコラム Vol.65
石川県立歴史博物館(金沢市)

秋の空は驚くほどに美しい青さをみせます。 運動会が秋に多いのは、この季節の空を見上げさえすれば勝っても負けてもどこか清清しく感じられるからかもしれません。

その運動会といえば、私は真っ先に万国旗を頭に浮かべます。実は小学生の頃、運動会で万国旗を皆で作った思い出があるのです。 そのとき私が担当したのはたしかソ連の国旗でした。 カマとハンマーをデザインした真っ赤な国旗には子供ながら異国の情緒を感じたものです。
そのソ連は1993年に崩壊し、国旗も帝政ロシア時代のものに変わってしまいましたが、今でも地域の運動会で飾られる古びた万国旗の中に旧ソ連の国旗を見つけることがあります。 風に揺れる万国旗を眺め過ぎし日の冷戦時代を思い返す人もいるのではないでしょうか。

ところでそんな万国旗も近年は飾るのをやめる運動会が多いのだと聞きました。
日本に移り住む外国人が増え、その母国の旗が万国旗の中にすべてあるとは限らないからだそうです。
時代の国際化を思えば、国旗への配慮は当然の成り行きなのでしょう。
ただその一方で、太陽や星、月、宗教的シンボルなどが原色の生地の中で波打つカラフルな万国旗が秋空の青の下から消えていくのを私は何だか寂しく感じています。

石川県立歴史博物館(金沢市)
石川県立歴史博物館は、3つの赤煉瓦棟からできています。 博物館は「本多の森公園」内にあり、秋には見事な紅葉に彩られます。 この赤煉瓦棟はもともとは旧陸軍兵器庫であり、戦後は金沢美術工芸大学として使われていました。 平成2年には国の重要文化財に指定されました。

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