金沢市片町にある老舗バー「BAR SPOON」でウィスキーのオン・ザ・ロック
をオーダーするとグラスにボールのようにまん丸な氷が入って出てきます。
球体の氷は見た目に美しいのですが、角氷より表面積が小さいため溶けにくく酒の味
を長持ちさせる効果もあるのだとか・・・
切り出した角氷を丸く削る作業を担当しているのは若手バーテンダーのKさん。
氷の表面に指をあてがいナイフを一定方向に滑らせていくと、ものの3分ほどで
キャッチボールがしたくなるような見事な氷が完成します。流れるような手細工は匠
の趣ですが、Kさんによるとそれは地道な修業の成果なのだそうです。
そもそも氷を丸く削る作業は一人前のバーテンダーになるためのプロセスの一つで、
かつては後輩が先輩のテクニックを見よう見まねで盗んでいくものだったといいま
す。
「早く仕上げるためにどうすればいいのか、考えることが肝心なのです」とはマス
ターの弁ですが、なるほど氷は素早く削らないとどんどん手の中で溶けてしまいま
す。
氷をムダなく短時間で丸くすることは、カウンターの中で客に目利きしながら機敏に
立ち回らなければならないバーテンダーの心得と深く結びついているのでしょう。
今は丸い氷専門の製氷会社もあるそうですが、この店では昔ながらのスタイルにこだ
わります。優秀な人材というのはこのような場所から巣立っていくものなのかもしれ
ません。
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