寒さが身に沁む季節にふらっと北海道に出かけたことがあります。そのとき新鮮だったのが、行く先々で凍えた体を温めてくれた暖炉や薪ストーブ・・ 極寒の地ならではの暖房器具は灯油や電気を使うそれとは違ってどこか懐かしく、心の中までじわじわ暖めてくれるようでした。薪という燃料には、自然の恩恵に浴しているという安堵感や郷愁があります。実際の熱量もさることながら、心理面での暖房効果も絶大といえるでしょう。 今度、脱サラした私の知人が能登半島で「薪屋」を始めることになりました。最初は驚きましたが、能登の里山から雑木を切り出し1本1本の薪を丁寧に時間をかけて作りたいと語る彼の表情は真剣でした。「能登の木材を使った薪をくべると日本海の潮の香りがするの?」 きわめて素人的な私の質問は笑って否定されましたが、一緒に薪談義を繰り広げていると本当にそのようなプラスアルファのある薪が出来あがるような気がしてくるから不思議です。 能登の「薪屋」がどんな薪をこしらえ、それがどのように人々の心と体を暖めていくのか、私は今から楽しみでなりません。