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表紙とコラム Vol.211
山中温泉こおろぎ橋(石川県加賀市)
山中温泉こおろぎ橋(石川県加賀市)
加賀温泉郷の山中温泉の名所、鶴仙渓に架かる「こおろぎ橋」は、2019年10月に架け替え工事が完了し、真新しい総檜造りの橋が 紅葉の中に浮かびます。この「こおろぎ橋」から鉄筋コンクリート製の「黒谷橋」までの約1.3Kmは遊歩道があり、四季折々の鶴仙渓を満喫できます。

先日テレビで相撲の土俵作りを見ました。地方場所では40トンもの土を使って、機械を一切使わずに土台から全て人力で作り上げるそうで、伝統を重んじる国技ならでは、と関心しました。

ところで、土俵上には4箇所後ろにずれている「徳俵(とくだわら)」があります。これは昔、相撲が外で行われていた頃、土俵に溜まった雨水の掃き出し口として使っていたそうで、その名残として今も残っています。

これまで「ここでドラマが起こることを期待し、わざと15センチ分後ろにずらすとは、当時の人もなかなか遊び心があるなぁ~」と思っていた私の持論は全くの的外れでした。

しかし役割はともかく、名前の由来は想像どおり「力士にとって得(トク)する部分」からきているそうです。そして「早起きは三文の徳」の「徳」を使っているのは、自分への得だけではなく、勝敗に関係なく見るものを魅了する素晴らしい相撲への期待が込められているのではないでしょうか

実際にうっちゃりや、捨て身の投げでの大逆転劇など、徳俵では数々の名シーンが生まれました。ここに足がかかれば何か不思議な力が湧き出る、そんな雰囲気すら感じるような気がします。

「選挙大敗で政党存続の危機、徳俵に足がかかった」とか、日本シリーズ3連敗で「徳俵いっぱいまで追い込まれた」など、政治や他のスポーツでも「後がない状態」を表す言葉として「徳俵」が使われます。
しかし、言葉に込められた当時の方々の想いからすれば、「さあ徳俵まで来た、ここから逆襲だ!」くらいの前向きな使い方が正しいのかもしれません。

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