私は古い地図を眺めるのが好きです。
最近はこうした地図が復刻されることが多く、先日も半世紀ほど前の金沢市内の地図を書店で見つけました。開くと聞いたこともない学校や施設がいくつもあり想像がふくらみましたが、もっとも目を見張ったのはほとんどの大通りに路面電車の線路が延びていることでした。金沢市内をかつて路面電車が走っていたことは知っていましたが、これほど縦横無尽に路線網があったとは・・・　こんなに張り巡らせていたのなら、1路線くらい残しておいても良かったのに、というのが正直なところです。

富山市では近年、新しいタイプの路面電車が走るようになりました。ヨーロッパに多い低床のトラム型車両がゆるゆると進んでいくと街の風景がどこかやさしくなります。
考えてみれば、東京の下町、広島、鹿児島・・・　路面電車の走っている街はどこも穏やかで絵になる景色です。利便性や環境への配慮などが話題に上る路面電車ですが、街の雰囲気作りに一役かっていることも私は大きな魅力だと思っています。

やはり金沢の路面電車もほんのわずかな区間でいいから残すべきだったのです。たしかにこの狭くて入り組んだ金沢の市街地に軌道を残すのは難しかったでしょう。ですが、今も元気で走り続けてくれていれば、この街はもっとほのぼのとした風情を提供していたにちがいありません。存続していれば金沢の大きな財産になっていたかもしれないのに・・・
惜しいことをしたものです。