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表紙とコラム Vol.99
瑞龍寺(富山県高岡市)

霊感タレントとしておなじみの稲川淳二さんによれば、夏に怖い話を聞いて涼もうとするのは日本人だけなのだとか・・・ 怪談は欧米人も好みますが、彼らがそのような話をするのは圧倒的に冬が多く、それも大勢で暖炉を囲みワイワイやるのが主流だそうです。 たぶん欧米人の怪談は高揚感を皆で楽しむようなものなのでしょう。 それに比べると日本人の恐怖の感じ方はもっと内面的です。 ふとした気配からこの世のものではない何かをしみじみ連想するので不気味さは倍増、夏の汗もたちどころに引いてしまいます。

疑心暗鬼の引き合いに「幽霊の正体見たり、枯れ尾花」という句が出されることがありますが、裏を返せばこれは日本人の豊かな感性の表れなのかもしれません。 恐怖から広がる複雑多岐な心理が日本人の濃やかさの根底にあるのだと私は思っています。

ところで先日、テレビやラジオの心霊特集が近年減ってきているという話を耳にしました。 「(幽霊のような)不確かなものを公共の電波に乗せるのはいかがなものか」などと苦言を呈する人が昔に比べ増えているのだそうです。 言いたいことはわからないでもないですが、これでは日本人の感性がどんどん錆び付いてしまいます。 見えないものを心で感じ取る繊細さを失わないためにも、怪談は夏の風物詩であり続けるべきだと思います。

瑞龍寺(富山県高岡市)
曹洞宗高岡山瑞龍寺は加賀藩2代藩主前田利長公の菩提寺として3代藩主利常公により建立されました。 山門、仏殿、法堂は国宝として、総門、禅堂、大庫裏、回廊、大茶堂は国の重要文化財に指定されています。 山門をくぐると綺麗に刈り込まれた芝生の緑が目に飛び込んできます。

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